ここ20年ほどで日本でも急速に市場が拡大しているREIT(リート)。
投資に関して情報収集すると、必ずと言っていいほど出てくる単語です。結論から言えばREITは不動産版の投資信託です。とはいえ、制度のあらましから仕組み、不動産投資との違いまで謎はたくさんあります。
そこでここでは、REITについて初心者が押さえておくべき情報を凝縮して解説していきます。
【基礎】REITとは?
REIT(リート:Real Estate Investment Trust)とは、不動産投資法人が保有している不動産に対し、複数の投資家が共同出資する形で資産運用を行う金融商品のことです。
投資家から集めた資金でオフィスビルやマンションなどの施設に投資し、賃貸料や売却益を投資家に分配します。読み方は「リート」で、「不動産投資信託」と訳されます。運用対象は不動産ですが投資信託なので、実際に不動産を取得するといった面倒な手続きはありません。
REITは、1960年にアメリカで誕生し、それ以来、各国で導入されるようになりました。日本においては2000年に投信法改正により投資信託の運用対象として新たに不動産等が加えられ、Jリートの組成が可能となったのです。
日本とアメリカのREITと区別するために、日本のREITはJ-REITと呼ばれます。
REITは、東京証券取引所がJリート市場を開設しており、毎日の指標を確認することができます。そして、年4回、決算日の約40日後に分配金が支払われるようになっています。
REITは配当利回りが比較的高めで分配金も高いので儲かりやすい投資と言えます。
REITの種類
REITの種類について紹介します。
0.基礎:REITで投資できる不動産の種類
REITは投資する不動産の用途や地域によっていくつかの種類に分類されます。
REITで投資できる不動産の種類は以下の通りです。
- 住宅
- 事務所やオフィスビル
- 商業施設
- 倉庫などの物流施設
- ホテル
- ヘルスケア
1.単一用途特化型REIT
単一用途特化型REITとは、特定の不動産の種類1つに対して集中投資できるREITです。オフィスビル・住宅・商業施設などの1つの種類に投資できます。
同じ不動産に集中的に投資するため、変動したときのリスクもリターンも大きく受ける傾向にあり、ハイリスク・ハイリターンであると言えます。
2.複数用途型REIT
複数用途型REITは、単一用途特化型REITのように1つに特化せず、異なる2種類以上の不動産へ投資するREITのことです。用途が異なる不動産へ分散投資できるため、景気や気候などの変動によって変動するリスクを小さくすることができます。
リスク分散が可能で単一用途特化型に比べるとローリスク・ローリターンなので、REIT初心者の方でも挑戦しやすくなっています。2種類の不動産へ投資する物は複合型REITと呼ばれ、3種類以上の不動産へ投資するものを総合型REITと呼びます。
【REIT】不動産投資との比較・違いを総まとめ
不動産投資との比較・違いをまとめました。
REIT | 不動産投資 | |
投資対象 | 不動産投資している会社が発行する証券を購入する(所有権なし) | 実際に不動産を購入する(所有権あり) |
最低投資金額 | 数万円程度〜 | 数百万円〜一千万円以上 |
所得および税金 | 配当金:配当所得
※申告分離課税または総合課税が選択可能 売却益:譲渡所得 総合課税が適用される |
賃料収入:不動産所得
総合課税が適用される 売却益;不動産売買に係る譲渡所得 分離課税が適用される |
違い1:投資対象
REITは不動産投資している会社が発行する証券を購入するものです。そのため、不動産に対する所有権はありません。
一方、不動産投資は実際に不動産を購入することで投資を行うものです。そのため、不動産に対して所有権を得ることができるという違いがあります。
違い2:最低投資金額
REITは現金購入のみとなりますが、数万円程度から投資が可能です。不動産投資は不動産ローンを利用可能で、ローンを利用する場合は数百万円、現金購入なら一千万以上の資金が必要となります。
違い3:所得および税金
REITの場合、配当は「配当所得」、売却時の所得は「譲渡所得」に分類されます。
配当金は給与や事業所得など他の所得と分けて課税される「申告分離課税」か、他の所得と合算されて所得が上がるほど税率も上がる「総合課税」とで選択することができます。
申告分離課税の場合は、株式投資などで発生した譲渡損失と通算できるため、場合によっては課税対象額を抑えることができます。売却益は「申告分離課税」が適用されます。
不動産投資の場合は、毎月の賃料収入は「不動産所得」に該当し、所得が上がるほど税率も上がる「総合課税」が適用されます。損失が発生した場合には、給与所得などと損益通算を行うこともできるので覚えておきましょう。
売却益は不動産売買に係る譲渡所得として分離課税となります。譲渡税はそれまでに物件を所有していた期間の長さに応じて税率が異なり、売却した日を含む1月1日時点において5年以下(短期譲渡)であれば所得税、住民税、復興特別所得税を合わせて39.63%。5年超(長期譲渡)であれば20.315%が課税されます。
【メリット】REITの強いところ
REITのメリットや強みについて紹介します。
メリット1:比較的少額でできる
実物不動産投資では数百万から数億円の資金が必要となります。
しかし、REITは1口1万円程度から購入することができ、さらにネット証券であれば100円から購入することも可能なので、少額から始めることができます。
メリット2:物件選びや手続きは専門家
実物不動産投資では物件の検索、相場の調査、物件見学、交渉、融資手続きなどさまざまな作業が発生します。
しかし、REITでは物件を探すなどの作業は基本的に必要なく、不動産の専門家に任せられるので、専門知識や面倒な手続きなどもありません。
メリット3:中長期投資スタイルのため日々の値動きをチェックする必要がない
REITは配当利回りが高いという特徴から、頻繁に売買するよりも購入後は分配金を受け取っていくスタイルの方が一般的です。そのため、株のトレードやFXなどと違い、毎日つぶさに値動きを追わなくても良いので管理がしやすくなっています。
メリット4:インカムゲインを得られる
インカムゲインというのは資産を保有していると得られる利益のことです。REITでは、投資先である不動産から得られた利益を分配金として受け取ることができます。
REITの場合、運用利益の90%超を分配金として投資家に分配すると、法人税が免除される仕組みがあるため分配金が多い傾向にあります。
メリット5:キャピタルゲインを得ることが可能
キャピタルゲインというのは、資産の売却によって得る利益のことを言います。REITは上場しているため株式のように売買することが可能です。
実物不動産投資では流動性が低いうえ、手続きが多く、売却開始から決済完了まで早くても数週間、長くて数年もしくは売却できないケースもあります。
しかし、将来インフレの見通しがある場合、地価や家賃収入が上昇するとREITの価格も上昇する可能性が高いと言えます。それだけでなく、不動産価値の上昇による売却益も望めます。
【デメリット】REITの弱いところ
REITのデメリットについて紹介します。
デメリット1:株式に近い変動幅
REITは、株式と同じように市場で取引されるため値動きは決して小さくありません。また、株式と同じように元本割れをするリスクもあります。
デメリット2:自然災害や環境問題等の偶発的事象の影響を受ける
REITは、株式やFXと同様に国や企業の状態に影響されるものです。REIT固有としては、地震や火災などの自然災害や環境問題等にも影響されます。
デメリット3:金利変動
投資法人が投資家から集めた資金で金融機関から借り入れをして不動産を取得するので、金利上昇に伴いローン返済額が増え、REITの収益を圧迫する恐れがあります。
デメリット4:運用コストが高め
REITは投資信託よりも販売手数料や信託報酬といった手数料が高めです。
デメリット5:投資法人の倒産リスク
REITはあくまで法人のため、倒産するリスクがあります。
株式投資では会社が破綻すれば株券は紙切れとなってしまいますが、REITでは保有不動産がゼロになるわけではないので、他の法人に引き継がれる等の可能性もあります。
【徹底解説】REITの選び方
REITの選び方について解説します。
投資対象(不動産の種類)で選ぶ
不動産の種類、特徴については必ず把握しておかなければいけません。特に、特化型については不動産の種類、物件数、エリア、築年数、稼働率などによって収益が左右されます。
利回りで選ぶ
利回りが高いREITは一見魅力的に見えるでしょう。
しかし、不動産売却によって一時的に分配金が増えている場合もありますので、過去の分配金の推移や格付け、スポンサー企業、その他の指標も把握する必要があります。
国内・海外で選ぶ
投資先の不動産が日本のものかどうかという点も選ぶポイントです。為替変動リスクなどを考慮して選ぶようにしましょう。
格付けを信用度の目安に
格付けというのは、格付け機関が第三者の目で投資法人の財務状況や運用状況を評価しているもののことです。格付け評価が高いほど健全で収益性が高いので、格付けを目安に選ぶのも1つのポイントです。
時価総額やNAV倍率を確認
資産を時価で評価したものを時価総額と言います。1口当たりの価格が1口当たりの純資産額の何倍かをあらわしたものがNAV倍率です。これは、REITの価格が割安か割高かを判断する指標となります。
一般的にNAV倍率が1以下であれば割安、1以上であれば割高と言うことになります。
借入金比率(LTV)を確認
LTVは有利子負債比率と呼ばれることもあり、純資産に対して借入金がどれだけあるかをあらわすものです。
借入金比率が高いほどリスクが高いと言えますのでしっかり確認するようにしましょう。
スポンサー企業と運用会社の情報を確認
REITにはスポンサー企業が存在します。スポンサー企業の役割は、投資法人に対しての物件の供給、投資法人が委託する管理会社に賃貸経営のノウハウや人材を供給するなどがあります。
REITはスポンサー企業の影響を大きく受けるため、必ず確認が必要です。
まとめ
REITは、実物不動産投資に比べ少額から投資でき、配当金を得ることができるので中長期的な投資に向いています。
ただし元本割れするリスクはあるので、それを理解して運用する必要があります。