投資といえば株式投資を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。それほどポピュラーかつオーソドックスな投資が株式投資です。
しかし、株式投資と一言に言ってもメリット・デメリットから参入方法、条件など「押さえておきたい情報」がたくさんあります。
そこでここでは、全ての株式投資ビギナーの方へ向けて
- 株式投資とは?
- 株式投資のメリット・デメリット
- 投資信託やFXとの違いは?
- スタートする方法~銘柄選びのポイント
など、分かりやすく解説していきます。
もちろん、利益を上げた際の税金の扱いにも触れていますので保存版としてご活用下さい。
【解説】株式投資とは
株式投資=株式会社が発行する「株式」を売買して、売買益や配当金などを狙うこと、です。
「株式」は、会社の所有権の一部のことです。資金を提供して株式を持つことで、その会社の株主の1人になれるというわけです。
株式投資の利益の得方は「売買差益(キャピタルゲイン)」と「配当金(インカムゲイン)」の2パターンがあります。
「売買差益」は株価が安い時に購入し、値上がりし売却した時の差額を利益とするものです。また、「配当金」とは、企業の利益のうち数%を株主に分配することです。
配当金のほかに、自社製品や優待券などを提供する「株主優待制度」もあります。
株式投資と他の投資との違い
株式投資と他の投資はどのように違うのでしょうか?それぞれの違いについて見ていきましょう。
投資信託との違い
株式投資と並んで人気のある投資手法には「投資信託」があります。株式投資と投資信託の主な違いについて説明します。
投資信託も株式投資の一種
投資信託も株式の売買を行い運用するということは同じです。ですから、投資信託も株式投資の一種と言えます。
一番の違い=「誰が運用するか」
株式投資と投資信託の一番の違いは、「誰が運用するか」と言うことです。
株式投資は自分で銘柄の選定から売買まで行う必要がありますが、投資信託は、投資家から集めた資金をファンドマネージャーと呼ばれるプロが運用してくれます。
ファンドマネージャーが投資家の代わりに株式や債券などを売買し、得られた収益が投資家に還元されるという仕組みになっています。
一点集中の株式投資
株式投資では自分で銘柄を選定するため、これと決めた銘柄に一点集中して投資することが可能です。
一点集中投資のメリットは大きなリターンが狙いやすいというところにあります。
値動きが大きい株式を購入すれば、短期間で株価が2〜3倍になり、大きな利益を得られることもあるからです。ただし、株価が急落すると大きな損失となる可能性もあるので注意が必要です。
自由度の高い投資信託
投資信託は複数の株式や債券、不動産などに投資を行うことにより、分散投資となりリスクを抑えることができます。
また、投資信託は投資対象や投資方針により分類されますが、株式へ投資する株式投資信託はより自由度の高い投資信託と言えます。
中でも、割安株を中心に投資するバリューパック(バリュー型ファンド)というものがあり、企業の価値が正しく評価されれば株価が上がることが考えられます。割安株であることから、値動きが小さく、安定して運用できる可能性が高いという考えを基本としています。
また、配当金が安定している企業が多いため、投資信託でも利益が還元されやすいというのも特徴です。
FXとの違い
株式投資とFXは同じ資産運用ではありますが、それぞれに特色があります。それぞれの違いについて解説します。
投資先の違い
株式投資は、証券取引所に上場している企業の株式に対して投資を行うことを言います。数万単位の企業が上場しており、その中から投資する銘柄を選択するというものです。
FXは円や米ドル、ユーロなどの通貨が投資対象となり、異なる2つの通貨の組み合わせ単位で投資を行うものです。また、株式投資よりもFXの方が少ない元手で取引できるというのも大きな特徴です。
取引可能時間の違い
日本の株式投資は平日9:00から11:30、12:30から15:00が取引可能時間となっています。日本の祝日は取引対象外です。なお、上記の取引時間は「場中」と呼ぶこともあります。
それに対し、FXは平日24時間取引が可能です。また、海外が祝日でなければ、日本の祝日でも取引可能です。24時間取引可能なので、夜間にしか取引できないという方に向いています。
レバレッジの違い
レバレッジとは、「てこ」の原理とよく似ています。
投資を行う際の資金(証拠金)の数倍の金額が取引可能になります。株式投資は現物株の場合は1倍、信用取引なら最大約3.3倍のレバレッジをかけられる仕組みとなっています。
FXは国内業者であれば最大25倍までレバレッジをかけることが可能です。手元に10万円ある場合、株式投資なら10万円から33万円分の株式を購入できますが、FXであれば250万円分の取引が可能となります。
ただし、海外のFX業社は25倍をはるかに上回るレバレッジを勧めて来ることもあり、多額の損失が発生するトラブルが発生しているのが現状です。金融庁から注意喚起されています。
参考:https://www.fsa.go.jp/ordinary/kanyu/20090731.html
株式投資のメリット
では次に、株式投資の主なメリットを解説します。
メリット1:売買差益(キャピタルゲイン)
キャピタルゲインは、株価が安い時に購入し、高くなったら売却することで、売買差益を得ることです。
企業の業績が上がると株価が上がる傾向にあります。
メリット2:配当金(インカムゲイン)
インカムゲインは、企業が利益を上げた際に株主に還元される利益のことです。権利確定日まで株式を保有していれば受け取ることができます。
売買差益とは別に企業から株主に還元されるため、大きな魅力があるのが特徴です。
メリット3:株主優待
株主優待というのは、株主に対して自社製品やサービスを提供する制度のことです。株を保有している期間や保有株数によって異なる場合もあります。
バラエティ番組で有名な「桐谷さん」がよく使っているのが、この株主優待です。株主優待を受けるためには、その企業が決めた権利確定日まで株式を保有している必要があります。
株式投資のデメリット
株式投資の主なデメリットを紹介します。
デメリット1:株価が下がるリスクがある
株式投資のデメリットは、元本が保証されないということです。株価は様々な要因で変動するため、購入価格よりも株価が下がると損失が発生する「価格変動リスク」があります。
最悪、企業が倒産するなどした場合には、株式の価値がなくなってしまうこともあります。これを「信用リスク」と言います。株式投資をする方は、ニュースや企業情報に注意を払う必要があります。
デメリット2:希望価格で売買できないことがある
株式投資の売買は、売りたい時に買い手がいないと売買が成立しないものです。また、買い手と売り手の希望価格が一致しないと売買が成り立ちません。
株の取引量が少ないと希望の価格で売買できないリスクが高まる「流動性リスク」というものもあるので覚えておきましょう。
デメリット3:外国株式等は為替相場の影響を受ける
外国株式では、上記のようなリスクに加え「為替変動リスク」というものがあります。外国の通貨で取引される株式は、外国の為替レートの変動によって評価損益が変動するものです。
購入時よりも売却時の方が円高になると、円での評価額が下がり、為替差損が生じてしまいます。
【STEP別】株式投資のはじめ方
前提情報として準備するものを簡単に紹介します。
口座開設
株式投資は、一般的な銀行の口座では行うことができません。証券会社を選択し、証券口座を開く必要があります。郵送や窓口での手続きも可能ですが、今はネットから証券口座を開設する方法もあります。
口座開設できたら、取引用の資金を口座へ入金します。日本株式の場合は100株単位での購入となるため、「株価の100倍+手数料分」の入金が必要となります。
購入銘柄の選択
企業の将来性、配当金や株主優待などを考慮し、自分の基準で購入銘柄を決定します。
購入
株の注文方法は「指値注文」と「成行注文」の2種類あります。
事前に必要な金額がわかるのがメリットですが、希望した価格で購入できない可能性があるのがデメリットと言えます。
注文を出せば必ず購入できるのがメリットですが、想定外の価格で取引される可能性があるのがデメリットと言えます。
適切なタイミングで売却する
日々の値動きや、投資先の企業やその業界のニュースを確認し、購入時と同様に売却方法や価格を設定して株を売却します。
購入時よりも株価が上がっていれば利益となるという仕組みです。事前に目標株価を決めておくなど、売却のルールを決めておくとスムーズに売却できるようになります。
【コラム】長期保有で配当を得ることも!
株式投資は売買差益で利益を得ることもできますが、配当金にも着目するのがポイントです。
配当利回り3%以上のものは「高配当株」と呼ばれています。株価の変動は考慮しなければいけませんが、一般的な1年定期預金の利率を0.01%とすると、30倍もの利率と言えます。
預貯金とは違い元本保証はありませんが、配当金が支払われる株を長期保有することにより大きな利益を得ることもできます。
株式の銘柄選びのコツ
株式の銘柄選びのコツとして、チャレンジしやすい投資スタイルを紹介します。
1.割安株投資
割安株(バリュー株)投資は、企業の業績に対して株価が安いと判断できる銘柄へ投資するスタイルのことです。将来の株価上昇を期待して、売却益を稼ぐことを目的とした、中長期的な投資方法と言えます。
具体的な確認ポイントは次の通りです。
PER=株価/1株あたりの純利益
1株あたり純利益の何倍の値段が付けられているかを確認します。
PBR=株価/1株あたりの純資産
1株あたり純資産の何倍の値段が付けられているかを確認します。
短期的には株価の変動が大きくないため、大きな損失を出しにくくなっています。バリュー株は成熟している企業が多いため、配当金が安定している傾向です。
2.成長株投資
成長株(グロース株)投資は、今後の成長や、株価上昇が期待できる銘柄へ投資するスタイルのことです。
株価の大きな値上がりを期待できるため、短期間で利益を得る可能性もあります。成長を重視した企業であるため、配当金の還元がない場合も多いということを覚えておきましょう。
企業の将来性に期待して、現在の業績に対して株価が高く設定されている場合もあるため、急に株価が下落する可能性もあるため注意が必要です。
3.低位株投資、IPO投資
低位株とは、一般的に1株500円未満というように株価水準が低い銘柄に投資するスタイルのことです。投資資金が少なくて済むので取引しやすいですが、あまり注目されていないため、取引量が少なく、値動きも小さい傾向にあります。
関連するニュースなどで株価が跳ね上がることもあれば、株価が暴落することもあります。
IPO投資は、新規に市場に上場する銘柄を上場前に購入し、上場後に売却して利益を得るスタイルのことです。初値が公募価格を上回るケースも多いため、短期間で利益を出しやすい傾向にあります。
ただし、IPO株は人気が高く、当選確率が非常に低いのが大勢の見方です。一般的には1〜2%が当選確率の目安です。公募価格れすることもあるため、必ず利益を得られるわけではありません。
株式投資でかかる税金
株式投資で得た利益にかかる税金について解説します。
譲渡益課税
譲渡益課税というのは、株式を売却した際の利益に対する課税のことです。申告分離課税に分類され、他の所得とは別に課税されます。
税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%です。課税対象期間は、1月1日から12月31日までの1年間となります。
特定口座の「源泉徴収あり」を選択すれば、証券会社で売却損益や税金の計算を行ってくれ、税金を売却代金から差し引いてもらえるため、確定申告が不要となります。
特定口座の「源泉徴収なし」を選択した場合、証券会社で売却損益と税金の計算はしてもらえますが、納税まではしてもらえないため、損益がプラスとなった場合は確定申告が必要となります。
一般口座を選択した場合、売却損益や税金の計算は自分で行い、利益が出た場合は確定申告が必要です。
配当課税
配当課税というのは配当金・分配金にかかる税金のことです。税率は譲渡益課税と同様に20.315%で、配当金は受け取り時に源泉徴収されるため、原則確定申告は不要となります。(申告不要制度)
総合課税は、他の所得と合算して税額を計算する方法のことです。配当控除を受ける場合は総合課税を選択して、確定申告を行いましょう。
申告分離課税とは、他の所得とは合算せず税額を計算する方法です。後述の損益通算する場合は、申告分離課税を選択し、確定申告する必要があります。
非課税(NISA)
株式投資の税金対策として、NISA口座での取引が挙げられます。
一般NISAで購入した株式は、売買差益にも配当金にも税金がかかりません。NISA口座には「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があります。
一般NISAは、株式や投資信託を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能です。
ちなみに、つみたてNISAは一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有可能です。ただし、一般NISAとつみたてNISAは併用不可だということを覚えておきましょう。
節税対策として有効なNISA口座ですが、損益通算や損失の繰越控除は対象外となります。損益通算や損失の繰越控除については、次章で説明していきます。
株式投資と税制のポイント
株式投資を行う上で、理解しておきたい税制ポイントを解説します。
損益通算ができる
損益通算とは、1年間の利益と損失を相殺し、課税対象となる利益を少なくできる制度のことです。ただし、NISA口座で発生した損失は、他の口座で得た利益と損益通算はできないため注意が必要です。
損失の繰越控除ができる
損失の繰越控除とは、本年分の損失を控除しきれない場合に、翌年以降にその損失を繰り越して、翌年以降の利益から控除できる制度のことです。
最長3年間繰越可能ですが、繰越控除の適用を受けるためには、毎年確定申告をする必要があります。
なお、NISA口座で発生した損失は、損失の繰越控除の対象とはならないので注意が必要です。
経費で控除ができる
株式投資に必要なパソコンや通信費、セミナー受講費用などを必要経費として計上し、確定申告によって控除を受けることができます。
株式投資で得た利益から必要経費を除くことにより、課税対象額を少なくすることができます。
【重要】一般NISAが新しいNISAに変更される
一般NISAは2024年以降、新しいNISAに変更となります。これは、積立・分散投資による安定的な資産形成を促すことが目的です。
一般NISA | 新しいNISA | ||
投資可能期間 | 2014年1月~2023年 | 2024年1月~2028年 | |
非課税保有期間 | 5年間 | 5年間 | |
年間非課税枠 | 120万円 | 2階 | 102万円 |
1階 | 20万円 | ||
対象金融商品 | 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT等 | 2階 | 上場株式・ETF・公募株式投信・REIT等 |
1階 | 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託
※金融庁への届出が必要 |
||
買付方法 | 通常買付、積立投資 | 2階 | 通常の買付・積立投資 |
1階 | 積立投資(累積投資契約に基づく買付)のみ | ||
払い出し制限 | なし | なし |
※民法改正により、2023年1月からは18歳以上も利用できます
株式投資の注意点まとめ
株式投資を行う上で、注意しておきたいポイントを解説します。
投資原資(元手)について
株価は経済状況や企業業績などさまざまな要因を受けて変化するものです。購入価格より評価格が下がり、元本割れするリスクがあることを大前提としておく必要があります。
最低投資金額について
国内株式は一部を除き100株単位での購入が必要です。そのため、業績の良い優良株を購入する場合は、最低でも数十万円が必要となるため、注意しなければいけません。
株式投資の課税について
株式投資で得た利益は課税対象となります。NISA口座の利用や、損益通算・損失の繰越控除などの制度を活用することで、課税対象額を減らすことができます。
より多くの利益を得るためには、株式投資にかかる課税制度についての理解を深めて投資を行うことが望ましいです。
まとめ
資産運用の一つである「株式投資」は、メリットとデメリットを十分に確認した上で、資産形成の手段として取り組んでいきましょう。
投資先の企業や業界の研究だけでなく、税制についても知識を身につけることで、より多くの利益を生み出せる可能性が高くなります。