近年、株式や投資信託、FX、仮想通貨などさまざまな投資が注目を集めています。
その一方で、投資を始めるための知識や資金の不足を感じて、投資を始めることに二の足を踏む人も多くみられます。
そのような投資の分野において、最近、ロボアドバイザーと呼ばれるものが関心を持たれています。ロボアドバイザーとは、AIが資産運用のアドバイスやアシストを行うサービスのことであり、初心者が気軽に投資を始める手助けとなります。
しかし、AIが人間の代わりに投資運用の判断をすること自体に不安を覚える人も少なくありません。
そこで今回は、ロボアドバイザーの基本的な内容について解説したのちに、ロボアドバイザーの種類や特徴、ロボアドバイザーを導入するメリットとデメリットなどについて述べ、最後におすすめのロボアドバイザーを紹介します。
ロボアドバイザーとは?
ロボアドバイザーとは、投資による資産運用の上で必要とされるアドバイスやアシストを、人間の代わりにAIによって提供するサービスのことです。
ロボアドバイザーは、投資初心者の投資への参入の心理的な障壁を低くする効果が期待されています。米国では、2008年ごろから提供する業者が登場し始め、2011年ごろからロボアドバイザーという呼び方が定着しました。
日本でのロボアドバイザーサービスの提供は2016年ごろからみられるようになり、現在では、国内外の証券会社や銀行など金融系のさまざまな企業が提供を行っています。
ロボアドバイザーで出来ること
ここでは、ロボアドバイザーが具体的にはどのようなことができるのかについて解説します。
自動で資産運用
ロボアドバイザーでできることとしてまずあげられるのが、資産運用の自動化です。
金融商品の選定、それぞれの商品の購入額の決定、資産購入など、従来の資産運用のプロセスを自動で行ってくれます。また、積立設定ができるロボアドバイザーのサービスもあります。
最適なポートフォリオを提案
次にあげられるのが、最適なポートフォリオの提案です。
これは、利用者のリスク許容度に応じて、最適な資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を提案するサービスです。
利用開始前にリスク許容度やリターンの期待度、運用期間などを答えるだけで、分析・診断してくれます。
自動で資産のリバランス実施
さらに、ロボアドバイザーは、自動で資産のリバランスを実施することができます。
追加投資や一部出金をおこなった際、取引後のポートフォリオが最適な配分となるよう調整することで、自動でリバランスを実施してくれます。
ロボアドバイザーの種類
ロボアドバイザーの種類には、大きく分けてアドバイス型と投資一任型の2種類があります。ここでは上述2種類の概要とそのメリット・デメリットを解説していきます。
1.ロボが助言!アドバイス型
まず、アドバイス型のロボアドバイザーのメリットとデメリットを紹介します。
投資の提案をしてくれるサービス
アドバイス型のロボアドバイザーは、利用者が投資先や配分を決める際に、利用者のリスク許容度を診断し、その結果に基づいて提案してくれます。
提案を参考にすることで利用者は、投資先の分析や選定の手間を省くことができます。
メリット:投資コストが抑えられる
メリットは、基本的に手数料がかからない企業が多い点が挙げられます。これにより、後述の投資一任型と比べて、投資コストを抑えることができます。
デメリット:自分で運用を行う必要がある
デメリットは、商品の選定および運用については自動化できない点です。アドバイス型を用いる場合には、商品購入や売買の運用は自分で行う必要があります。
2.運用・調整までお任せ!投資一任型
次に、投資一任型のロボアドバイザーのメリットとデメリットを紹介します。
投資の全てを自動で行ってくれるサービス
投資一任型のロボアドバイザーは、商品の選定から売買・運用まで、投資の全ての作業を自動で行ってくれます。資金を預ければ全て自動で資産運用をしてくれるため、アドバイス型に比べ手間と時間を省くことができます。
メリット:時間や知識がなくても高度な運用ができる
メリットは、利用者の投資スタイルにあわせて、投資運用をすべて自動で行ってくれることです。これにより、投資の知識がなくても時間をかけずにプロに比肩する高度な運用を行うことができます。
デメリット:手数料がかかる
デメリットは、サービスに年間1%程度の手数料がかかる点です。投資運用のコストをできるだけ抑えたい投資家は、この点に注意が必要です。
【ロボアド】投資信託との比較・違いを総まとめ
投資信託とは、プロが資産運用を行うサービスのことです。一方、ロボアドバイザーとは、先述の通り、AIが利用者に代わって資産運用を行うサービスのことです。
利用者の代わりに資産運用をするという点では両者は同じですが、異なる点もあります。
ロボアドバイザー | 投資信託 | |
投資先の選定 | 利用者にあった投資先を自動で選定 | 商品を自分で調査・選定 |
リバランス | 保有資産の価格変動に伴い、自動でリバランスを行う | 商品を定期的に見直し、自分でリバランスを行う |
リスクへの対応 | 利用者のリスク許容度を判断し、ポートフォリオを設定・運用 | 自分でリスクを判断・運用 |
違い1:投資先の選定
まずは、投資先の選定の違いです。
証券会社にもよりますが、投資信託の取扱銘柄は数千種類存在します。その中から自分にあった銘柄を調査し、購入・運用を続けるためには、知識も時間も必要とします。
ロボアドバイザーであれば、利用開始前に質問に答えるだけで、利用者のリスク許容度を診断し、最適なポートフォリオを提案してくれます。
違い2:自動リバランス
次に、自動リバランスの有無です。
投資信託の場合、運用中の商品の見直しやリバランスは自分で行う必要があります。例えば、当初は「国内株式50%」「海外債権50%」の投資配分としていたとします。
その後、国内株式が20%上昇し、海外債権が20%下落したとします。ここで当初の配分比率に戻すためには、国内株式を10%分売却し、海外債権を10%分購入する必要があります。
このような、経済状況の変化をうけての定期的な見直しや商品の売買を行うためには、知識も時間も必要です。
一方、投資一任型のロボアドバイザーであれば、資産配分のリバランスを自動で行ってくれます。
違い3:リスク許容度の設定
最後に、リスクへの対応の違いです。
投資信託は、自分でリスクを判断して運用する必要があります。そのため、自分が投資した商品に関係する経済状況や金融市場などの情報収集を行い、保有商品の見直しを行わなければなりません。
一方、ロボアドバイザーは、利用開始前の質問によって利用者のリスク許容度を診断し、最適なプランで運用を開始することができます。また、投資一任型であれば、リスク許容度の設定の範囲を超えると、自動的にポートフォリオの組み替えを行ってくれます。
【メリット】ロボアドバイザーの強いところ
ここでは、ロボアドバイザーのメリットについて解説していきます。
投資の知識がなくても始められる
通常、資産運用を行うためには、投資に関する知識が必要です。さらに利益を出すためには、経験も必要となります。しかし、ロボアドバイザーを導入すれば、特別な知識も経験も必要ありません。
投資一任型のロボアドバイザーならば、商品の選定から購入・運用まで全て自動で行ってくれるからです。
ただし、先述したとおりアドバイス型のロボアドバイザーを用いる場合には、その提案内容に基づき、利用者自身が投資先や配分を決定するため、投資の知識が多少は必要となります。
手間と時間がかからない
利用開始前の質問に対する回答にしたがって、ロボアドバイザーは、利用者に最適な投資の情報収集から分析、提案まで一括して実行してくれます。
これにより、時間や手間をかけずに投資を始めることができます。さらに、投資一任型のロボアドバイザーを活用すれば、運用まで自動化が可能なため、さらに手軽に資産運用を行うことができます。
最適なポートフォリオを維持できる
投資信託では、状況に応じて自分でリバランスする必要がありますが、これには知識も経験も求められます。
一方、投資一任型のロボアドバイザーであれば、投資運用開始当初のポートフォリオを維持するため、必要に応じて自動でリバランスしてくれるため、経験は不必要です。
客観的に資産運用できる
自分で資産運用を行うと「希望的観測」「期待」「不安」「焦り」などといった主観的な判断が入る可能性があります。それは時に誤った判断へと繋がります。
しかし、ロボアドバイザーであれば、AIが判断するため、極めて客観的に資産運用を行うことができます。
少額からの投資が可能
一般的な国内株式投資では、100株単位での購入が基本となります。そのため、特に優良株の購入には、数十万円かかるケースも多くみられます。
一方、ロボアドバイザーを活用した投資の場合、サービス会社にもよりますが、一般的には100円から10万円といった小額から、投資を始めることができます。
【デメリット】ロボアドバイザーの弱いところ
メリットが数多く存在するロボアドバイザーですが、デメリットもあります。ここでは、そのデメリットについて説明していきます。
すぐに大きな利益は出ない
ロボアドバイザーはリスクを抑えた投資方法です。そのため、短期間で大きな利益を得ることは期待できません。サービスを提供する会社にもよりますが、ロボアドバイザーによる投資は、長期的な資産運用に適しています。
コストがかかる
アドバイス型のロボアドバイザーであれば、基本的に手数料は無料で利用できます。
しかし、投資一任型の場合、年間の運用手数料がかかるため、その分運用コストは高いといえます。
サービスによっては、運用期間や運用額に応じた手数料の割引があるため、自分の投資スタイルに合ったサービスを探すのが得策といえます。
元本割れのリスク
ロボアドバイザーによる資産運用も決して万能ではありません。元本割れのリスクは存在します。
しかし、どのような投資運用であっても、元本割れのリスクは付きまとうものです。ロボアドバイザーがとりわけリスクが高い、と言うわけではありません。
NISA口座対応しているサービスは少ない
アドバイス型のロボアドバイザーの提案をもとに自分で投資信託を購入する場合、NISA対応銘柄であれば非課税で投資可能です。
ただし、投資一任型で自動売買する場合には、NISA口座に対応しているサービスが少ないために、NISA非課税の対象にならない場合が考えられます。NISAの枠内で資産運用したい場合は注意が必要です。
投資経験が積めない
投資一任型のロボアドバイザーのメリットは、銘柄の選定から運用まで全て自動で行ってくれることです。
しかしそれは、見方を変えれば、自分自身の投資経験や知識を積む機会を逃しているともいえます。ロボアドバイザーのサービス会社の多くは、投資情報をWebサイトやブログで紹介しています。
すべてをロボアドバイザーに任せきりにせず、これらを活用して、自分でも資産運用について考えてみることもまた、投資を続けていく上で大切なことです。
ロボアドバイザー導入が向いている人
ロボアドバイザーはあくまでひとつのサービスであり、利用者によっては向き・不向きがあります。これについて、以下で説明していきます。
投資知識や経験はないけど投資してみたい人
ロボアドバイザーは、運用目的、運用スタイルに合わせた商品を提案してくれます。
さらに投資一任型であれば、その後の運用の自動化も可能です。そのため、投資経験はないが資産運用をしてみたい人が手軽に投資を始めるのに向いています。
投資に割く時間がない人
ロボアドバイザーはオンラインサービスのため、いつでもどこでも操作することが可能です。
仕事や家事、育児に忙しく投資の情報収集に割く時間が取れない人でも、ロボアドバイザーに任せることで資産運用が可能になります。
また、複雑な操作がないため、操作習得や設定自体に時間を取られることもありません。
運用をプロに任せたいけど高いコストはかけたくない人
ロボアドバイザーは個別株投資より少額から始めることができます。
投資経験がない方や多忙なために情報収集に時間を割けない方にとって、低コストで資産運用を行えます。
手数料についてみてみると、銀行や証券会社などが提供する資産運用管理サービスであるファンドラップでは、預かり資産の2〜3%程度かかります。しかし、ロボアドバイザーの手数料は、投資一任型であっても、1%程度しかかかりません。
【解説】逆に向いていないのはこんなパターン
上述とは逆に、ロボアドバイザーの導入が向いていない利用者のケースもあります。ここでは、それについてみていきます。
特徴:主体的に投資を行いたい人
まず総じて、主体的に投資を行いたいと考える利用者には、ロボアドバイザーの導入は向いていません。そして、そのような利用者にもいくつかのパターンが考えられます。
パターン1:投資について知識がある人
投資についてすでに十分な知識がある人であれば、ロボアドバイザーの提案も特に必要ではありません。
パターン2:投資に時間をかけられる人
ロボアドバイザーの大きなメリットは、AI判断による最適化や運用の自動化による時間の節約です。逆にいえば、投資に時間をかけられる人にとっては、ロボアドバイザーの導入に大きなメリットはありません。
パターン3:少しでもコストを抑えたい人
ファンドラップと比べれば投資一任型のロボアドバイザーの手数料は安いものの、それでもゼロではありません。少しでもコストを抑えたい人にはおすすめできません。
パターン4:全て自分で把握・判断したい人
投資に限らず、全て自分で把握・判断したい人は少なからず存在します。投資開始当初の設定や運用における判断をAIに任せたくない人にも、ロボアドバイザーはおすすめできません。
パターン5:短期的な利益を期待している人
先に述べたように、ロボアドバイザーによる投資は、リスクを抑えて長期的に資産運用するスタイルをとります。短期的に大きな利益を期待する人には不向きなサービスです。
【最新】いまオススメのロボアドバイザー3選
最後に、数ある中でもおすすめのロボアドバイザーの企業を3社紹介します。
1:ウェルスナビ
種類 | 投資一任型 |
最低投資金額 | 10万円(積立であれば月1万円) |
投資対象 | 主要な海外ETF |
手数料 | 運用手数料 年率1.1%(税込)+ETF保有コスト(年率0.08%〜0.13%) |
その他 | 節税機能が優秀(NISA口座でも利用可能。税金が一定額を超えた場合翌年以降に繰延べる機能あり) |
ウェルスナビは、ロボアドバイザーの預かり資産、運用利用者が多い国内最大手企業です。NISA口座で自動運用を行うことができます。ただし、つみたてNISAやジュニアNISAには対応していませんので、注意が必要です。
2:テオ(THEO)
種類 | 投資一任型 |
最低投資金額 | 1万円(積立可)※テオプラス(他社との提携ありの場合のみ) |
投資対象 | 主要な海外ETF |
手数料 | 運用手数料 年率0.715〜1.10%(税込) |
その他 | テオプラスdocomoではdポイントもたまる |
テオは、月1万円から投資することができます。預かり資産の金額により運用手数料の年率が変化するので確認が必要です。docomoやJALなどと提携した「テオプラス」があります。
3:らくらく投資
種類 | 投資一任型 |
最低投資金額 | 100円 |
投資対象 | 日米欧と新興国株式、日米不動産投信、世界債権 |
手数料 | 運用手数料 年率0.4915%(税込) |
その他 | 楽天ポイントが投資に使える |
らくらく投資は、楽天証券提供のロボアドバイザーです。そのため、楽天ポイントやクレジットカード決済を使った投資を行うこともできます。投資先も多いため、分散投資を行うことが可能です。また、NISA口座にも対応しています。
まとめ
今回は、ロボアドバイザーの基本的な内容や、ロボアドバイザーの種類や特徴、ロボアドバイザーを導入するメリットとデメリットなどについて解説してきました。
ロボアドバイザーは、利用者の代わりにAIが商品の提案や運用をしてくれるため、手間と時間を省くことができ、投資の初心者でも手軽に投資を始めることができます。
アドバイス型と投資一任型の特徴やメリット・デメリットを確認し、最後に紹介したおすすめのロボアドバイザーも参考にしつつ、自分にあった投資方法や企業を見つけてください。