【保存版】家賃収入を得る人のための確定申告ガイド/手順と注意点を公開

不動産投資

不動産投資で家賃収入を得る人であれば、必ず知っておかなければならない知識があります。それが確定申告です。不動産投資で収入を得る人は、確定申告をする必要があります。

とはいえ、確定申告は難しそうなイメージを抱く人が多いと思います。申告しようと思っても、実際どのようにすればいいのかわからない人も多くいるのではないでしょうか。なぜなら会社員であれば、税金の申告は会社が代わりにやってくれるからです。

不動産投資はそうはいきません。自分自身で申告する必要があることから、そのための正しい手順、方法を知る必要があります。特に会社員をしながら不動産投資をしている人であれば、節税につながることもあります。知識がないために大きな税金を取られてしまうのはもったないですよね。そこでこの記事では、不動産投資で収入を得た場合の確定申告についてお話ししていきたいと思います。

家賃収入を得る人にとって、確定申告は「得?」か「損?」か

結論から言うと、不動産投資で利益を得た場合は確定申告が必要になります。した方がいいかどうかではなく、する必要がるわけですね。とは言え、せっかく得た利益から税金を取られると思うと、気持ち的に損した気分になりますよね。

ですが、確定申告は投資家にとって必ずしもマイナスではありません。なぜなら、知識を持って確定申告をうまく行うことで、節税につながることもあるからです。会社員をしながら不動産投資を行うサラリーマン大家の場合は、不動産投資にかかる経費を計上することで、会社員として得る給与所得の税金を減らすことができるからです。そのためには、正しい知識をまずは身につけておく必要があります。

家賃収入にはどのぐらいの税金がかかるのか

不動産経営を行って家賃収入を得た場合、実際にはどのぐらいの税金になるのか。まずは税金の仕組みや金額について正しく理解しておくようにしましょう。

・不動産所得とは
不動産投資の税金を知るためには、まず不動産所得を算出する必要があります。

不動産所得とは、不動産経営を行って得た利益、家賃収入から不動産経営にかかった経費を引いたもののことを言います。どのぐらいの税金がかかるについては、不動産所得から5~45%程度の所得税がかかることになります。

<家賃収入にかかる所得税>
・まずは不動産所得を把握する
不動産経営で得た収入-それにかかる経費=不動産所得
所得税=不動産所得×4~45%

ただし、最終的な課税所得金額は、専業なのか兼業なのかによって変わってきます。

<課税所得金額>
専業の場合:不動産所得 - 各種所得控除
兼業の場合:給与所得 + 不動産所得 - 各種所得控除

専業の投資家なのか、兼業の投資家なのかで最終的な金額が変わってきます。ここから、課税所得金額とごとの税率が掛けられます。所得ごとの税率、控除額は以下の通りです。

課税所得金額

税率

控除額

195万円以下 5
195万円超~330万円以下 10 97,500
330万円超~695万円以下 20 427,500
695万円超~900万円以下 23 636,000
900万円超~1800万円以下 33 1,536,000
1800万円超~4000万円以下 40 2,796,000
4000万円超 45 4,796,000

不動産投資が兼業なのか、専業なのか、課税所得金額はいくらなのか、これらで税率が決まります。控除額なども含めて、最終的な所得税額が決定するのが税金の仕組みです。

税金を安く抑えるための確定申告のポイント

・家賃収入は経費を計上して節税につなげる

不動産投資で得られる家賃収入に対する税金は、誰しも安く抑えたいと思うものですよね。そのためには、経費を計上することがポイントになります。どんなお金が経費として計上できるかを正しく知っておく必要があります。

不動産投資で経費計上できるものには以下のようなものがあります。

経費の種類

概要

減価償却費

不動産の購入費用を建物の耐用年数に応じて分割したもの。

管理費

管理会社への業務委託費、修繕積立金

修繕費

退去時の室内クリーニング、修繕費用

損害保険料

火災や地震などの天災に備えるための保険料

借入金の利子

銀行から借り入れたローン返済の利子

各種税金

固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税、収入印紙代

その他の費用

不動産経営関係者との交際費、税理士や司法書士への依頼料など

不動産投資で得た収入から上記を経費として差し引くことで、所得を減らすことができます。所得が下がることで、所得税率が下がります。税金が安くなると言うわけです。所得が下がると、所得金額の10%を支払うことになる住民税も安くなります。結果として様々な税金を安く抑えることにつながります。

確定申告は税金の申告を行うだけでなく、こうした経費計上を行って税金を安く抑えることもできます。知識がない人であれば難解に感じるかもしれませんが、税金に大きな差が出ますので、しっかりと行うようにしましょう。

不動産投資の確定申告は「青色申告」がお勧め!

ご存知の方も多いかもしれませんが、確定申告には2つの申告方法があります。

・白色申告
・青色申告

どちらを選択することも可能ですが、お勧めは青色申告です。理由は青色申告は様々な優遇を受けることができ、税金を安く抑えることができるからです。

以下は、白色申告と青色申告の主な違いです。

白色申告

青色申告

帳簿付け

必要

必要

事前の届け出

必要

必要

特別控除

なし

最大65万円

専従者給与

1人あたり最大50万円
(配偶者は86万円)

給与の全額

損失の繰り越し

なし

赤字を3年間繰り越せる

少額減価償却資産の特例

なし

30万円未満

控除額を見ても青色申告の方には大きなメリットがあることがわかります。他にもある青色申告のメリットについて詳しく見ていきたいと思います。

青色申告の3つのメリット

メリットその1:65万円の特別控除枠

一番のメリットとも言えますが、青色申告は65万円の特別控除があります。あなたが不動産投資で年間300万円の家賃収入を得るとします。この場合、300万円-65万円=235万円に対して税金を支払うことになります。大きな節税につながることがわかると思います。
(※不動産所得が65万円より少ない場合には「不動産所得=特別控除額」)

メリットその2:専従者給与を経費として計上可能

これも税金を安く抑える上で大きなメリットとして知られていますが、青色申告では専従者給与を経費として計上することができます。例えば、不動産経営で家族を雇用、そこで支払った給与は全額経費として計上することができます。
(※専従者になれるのは生計を共にしている15歳以上の配偶者、子供、親、祖父母が対象)

メリットその3:損失は3年間繰越可能

不動産経営で赤字になった場合、3年間は赤字分を繰越することができます。例えば、1年目、2年目は赤字で、3年目に黒字だった場合、3年目の黒字の年に1年目、2年目の赤字分を繰り越して計上できるので、この年の税金を抑えることができます。

メリットその4:少額減価償却資産の特例

30万円未満の減価償却資産を購入した場合、一般的には年数で割って経費計上していくことになるわけですが、青色申告ではその年に全額経費として計上することができます。
(※減価償却資産:事業用の資産、購入価格10万円以上の耐久資産のこと。パソコンやプリンタなどの機械、コピー用紙などの備品、ソフトウェアなど)

青色申告で確定申告するために準備する必要があるもの

1:所得税の青色申告承認申請書の提出

青色申告を行うためには、まず所得税の青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。所得税の青色申告承認申請書は税務署でもらうことができます。他にも国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。

国税庁ダウンロードページ

2:事業的規模かどうか

不動産経営における青色申告において、税制上の優遇を受けるためには、行っている不動産経営が「事業的規模」かどうかを判断されます。判断基準は以下のどちらかを満たすかどうかです。

  • 第三者に貸している不動産の規模が10室以上のアパートやマンションである。
  • 戸建住宅を5棟以上貸している。

上記のどちらかを満たしていれば問題ありませんが、どちらも満たしていない場合は、青色申告による優遇措置を満額受けられない場合があります。青色申告特別控除が10万円に引き下げられたり、専従者給与控除が認められなかったりと、せっかくの優遇措置が最大限受けられなくなるので注意しましょう。

3:複式簿記で記帳

青色申告は白色申告と違って、

・1年間に得た家賃収入と経費を記入した損益通算書
・年度の初めと終わりの資産を記入した貸借対照表

この2つの種類を作成して申告する必要があります。申告期限は原則毎年3月15日までとなっています。作成した帳簿や書類、請求書、領収書などは過去7年分を保存しておくことが義務付けられています。

難しくない!確定申告の簡単3ステップ

確定申告は難しいイメージを持つ人も多いかもしれませんが、大きく分けると3つのステップだけです。以下、3つのステップを順に解説します。

ステップ1:確定申告に必要な書類を集める

確定申告に必要な書類は以下があります。

  • 所得税青色申告決算書(不動産所得用):自分で用意する
  • 確定申告書B:自分で用意する
  • 不動産売買契約書:不動産会社からもらう
  • 売渡精算書:不動産会社からもらう
  • 賃貸契約書:不動産会社からもらう
  • 譲渡対価証明書:不動産会社からもらう
  • 家賃送金明細書:不動産会社からもらう
  • ローンの返済予定表:銀行からもらう
  • 固定資産通知書:送られてくる
  • 損害保険などの証券:送られてくる
  • 源泉徴収票:勤務先からもらう

上記、自分で用意するもの、送られてくるもの、銀行や不動産会社に請求するものなど様々です。確定申告に間に合うように早めに準備しておくようにしましょう。

ステップ2:確定申告に必要な書類を作成する

確定申告で提出するための書類を作成しましょう。作成する必要があるものは以下の2つです。

・所得税青色申告決算書
青色申告で提出するための決算書です。
全部で4種類ありますが、その中から「不動産所得用」を選択します。

・確定申告書B
個人事業主向けの申告書のことです。
専業大家として不動産所得のある会社員の場合は、この申告書を作成して提出します。

初めて不動産収入での確定申告をされる方、申告書の作成を行う方のために、どの項目に何を記載するのか、書類の書き方の一例を以下に掲載いたします。

それぞれの書類の記載例と書く内容を順番に紹介していきます。

所得税青色申告決算書の書き方

項目

記載する内容

基本情報

住所、氏名、職業、電話番号

収入金額

賃貸料、礼金・更新料、その他(共益費、インターネット回線設置料金など)の収入

必要経費

減価償却費、借入金利子、租税公課(固定資産税、登録免許税、不動産取得税)、損害保険料などの経費

専従者給与

専従者給与(配偶者や家族に給与を支給している場合)

青色申告特別控除額

10万円 or  65万円の青色申告特別控除前額

不動産所得の収入の内訳

決算書1ページ②の内訳

専従者給与の内訳

決算書1ページ④の内訳

減価償却費の計算

建物本体・設備の減価償却費の計算

地代家賃の内訳

自宅を事務所利用している際の、家賃、光熱費の合計から経費として計上する金額を掲載

借入金利子の内訳

銀行以外からお金を借りた場合の利子

税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳

税理士や司法書士に支払った依頼料

資産の内訳

年度の始めと終わりに保有している資産

負債・資本の内訳

年度の始めと終わりに抱えている負債と資本

確定申告書Bの書き方

項目

記載する内容

①基本情報

住所、氏名、生年月日、職業、電話番号、マイナンバー(個人番号)

②収入金額

年間の不動産収入を「青色申告決算書」から転記
サラリーマンの場合は給与所得も記入

③所得金額

年間の不動産収入-経費を「青色申告決算書」から転記
サラリーマンの場合は給与所得も記入

④所得から差し引かれる金額

各種所得控除

⑤税金の計算

税金を計算して記載

⑥その他

専従者給与、青色申告特別控除、損失の繰り越しなど

基本情報

住所、氏名

所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)

不動産所得の内訳
サラリーマンの場合は給与所得も記入

雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項

公的年金以外の雑所得の内訳

特例適用条文等

居住用の住宅を売却した際の利益や損失に関する特例

事業専従者に関する事項

専業従事者の氏名、マイナンバー、生年月日、仕事内容、給与として支払った金額

住民税・事業税に関する事項

扶養家族の氏名、マイナンバー/青色申告特別控除額、損益通算の特例適用前の不動産所得、前年中の開廃業など

ステップ3:作成した書類を税務署に提出

ここまでのステップで作成した確定申告に必要な書類を税務署に提出します。

提出方法は、

・税務署窓口
・郵送
・インターネット

などの方法があります。

確定申告書類の提出は、毎年2月16日~3月15日までの1ヶ月間となっているので、この期間内に忘れずに提出しましょう。

家賃収入の確定申告についてのQ&A

家賃収入の確定申告を行う上で、よくある質問を以下に記載しておきます。わからないことがある方、初めて行う方は参考にしてみてください。

Q.サラリーマンが転勤で空いた持ち家を賃貸に出して得た場合の家賃収入の確定申告する必要がありますか?

A.確定申告する必要があります。持ち家を賃貸に出し、第三者から家賃収入を得た場合は不動産所得とみなされるからです。不動産投資の家賃収入と同じく、確定申告を行いましょう。

Q.私は年金受給者です。家賃収入を得た場合、確定申告はどうなりますか?

年金受給者であれば確定申告する必要はありません。ただし、得た家賃収入が「年間20万円以下」と言う条件があります。不動産所得が20万円以上の場合は、年金受給者であっても確定申告が必要です。

Q.家賃収入を得ている物件が、妻との共同名義です。この場合の確定申告はどうなりますか?

物件が共同名義の場合は、不動産の名義人全てが家賃収入を得ているものとみなされます。名義となっている人全員、確定申告を行う必要があります。

Q.専業主婦ですが、家賃収入を得た場合は確定申告する必要がありますか?

原則確定申告を行う必要がありますが、例外もあります。それは、得た家賃収入から、控除や経費を差し引いた時に38万円以下になる場合です。この場合は確定申告の必要がなく、配偶者控除を受けることもできます。

以上が、確定申告でありがちなよくある質問ですが、それぞれの状況によって答えが変わることもあります。わからないことがあれば、自分で判断するのではなく、税理士など専門家に相談することがおすすめです。

確定申告しないとどうなるのか?

家賃収入を得ているのにも関わらず確定申告を行わない場合は、強制的に追加徴収として税金を取られたり、期限が過ぎてしまった場合には延滞金なども取られます。確定申告の期限は必ず守るようにして、早めに準備を進めるようにしましょう。

場合によって、税務署から悪質だとみなされる場合は、大変なことになってしまうこともあります。ニュースなどでもたまに報道されていますが、国税局が悪質だと判断した場合は、意図的な脱税行為として逮捕・起訴されることもあります。

不動産オーナーでも実際に逮捕されたケースもあるので、忘れないようにすることはもちろん、意図的に申告をしないことで大きな追徴金を取られて後悔しないように注意しましょう。万が一忘れてしまった場合は、気がついた時点で早めに税務署に相談するようにしてください。

家賃収入を得る人のための確定申告ガイドまとめ

この記事では確定申告の基本と、提出書類の項目や作成の流れをお話ししました。家賃収入がある方は本記事の内容を参考にして、確定申告を行うようにしてみてください。

確定申告はややこしく、人によってはたくさんの人税金を払う行為にもなるため、気が進まない人も多いかもしれません。ですが、確定申告はただ税金を払うだけでなく、節税を行うための経費を整理していくための作業でもあります。人によっては少なくない節税効果が生まれる作業でもあるので、早めに準備して備えるようにしましょう。ここ数年、会計ソフトなども進化しており、確定申告もかなり楽になりました。便利なものも活用しつつ、しっかり確定申告することを覚えておきましょう。